その眼差しは公園の銀杏のようでした。

回覧板でご近所のお婆ちゃんが亡くなったことを知る。
4月24日に旅立たれたそうだ。
戦時中に愛犬を軍事供出せよと言われ差し出した子どもの頃の話なんかを聞かせてくれて、いつもうちのワンコにオヤツをくれたりした。笑顔で「娘ちゃん大きいなった。別嬪さんになったねぇ。彼氏はできたんかいな?」とお茶目に笑う可愛い人だった。

最後にお会いしたのはいつだろうと思い返してみると、その時は今年の1月15日聖天さんのとんど焚きの時だった。
新年のご挨拶をして「お元気ですか?」とたずねるといつものような笑顔で話すことなく、「もうあきませんわ」とおっしゃって、力無く笑った。
私は多分「何いうてはりますのん」と返したように思う。
混み合っていたことと、次の予定が気になっていた私は、会釈をして別れてしまった。

あれからあまりお見かけしなかった。
コロナのこともあったりで出辛くなっているのかなくらいに思っていた。

少し離れたところで、私たちの暮らしに優しい眼差しを向けてくれていた人。

ありがとうございました。

ご冥福をお祈りします。