大事にしてもらいや。

ワン子のお散歩中。
いつもの聖天さんの前で、お顔は知っているけれど
どこのオバアちゃんかわからないオバアちゃんから声をかけられる。

オバアちゃんは4人兄妹の中の一人娘で育った。
小さな頃、ゴン太盛りの兄達にいじめられるのを
不憫に思ったお父さんが一頭のシェパードを飼ってくれたそう。
そのワン子の名前はエレン。
一緒に眠り、一緒にお風呂に入って、
毎日学校まで迎えに来てくれていた。
とてもとても幸せな時間を過ごした。

ある日、オバアちゃんのお家にエレンを供出するようにと
ハガキがきた。
悲しくて悲しくて、でも逆らえなくてオバアちゃんは、
エレンを小学校に連れて行った。
何も話さなかったのに、エレンは別れを知っていて
なかなか前に進んでくれずとても長い時間をかけて
泣きながら小学校に行った。
そしてようやく門の中に入った時
4人の男の人にエレンは連れて行かれた。

お互いに振り返り、振り返り。
それが最期の別れとなった。

「それから、犬は大好きやけど飼わへん。私にはエレンがおるから。
犬は賢い。とてもよくわかってる。あんた大事にしてもらいや。」

そういってオバアちゃんは自転車で去って行った。
大事にしてもらうのは、私の方。
我が家のワン子は、とても家族思い。
オバアちゃんはきっと私に「大事にしてもらい」と言った。

ほんの10分程の立ち話。
大事なことをたくさん気付かせてもらった。
エレンはオバアちゃんのことを今でもきっと大事にしている。

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