しばらくすると叔父は意識を取り戻しました。
一瞬驚いたようにビクッしたので幼い頃から何十年かぶりに叔父
の手を握りました。
病人の手で爪も伸びてたのに、その手はとても綺麗で
一生懸命働いて家族を守り、しっかり生きて来た人のいい手でした。
「おっちゃん。おっちゃんの手、ええ手やわぁ。
ホンマに家族守って必死で働いて来た手やわ。
私この手忘れへんからね。」
叔父は涙をこぼしました。
それが私と叔父の最後でした。
翌日の夜叔父は他界しました。
末期のガンで、痛みもあったはずなのに、最期は叔母の手をとり
「ありがとう」と言葉を遺して逝ったそうです。
いつもにこやかで優しい人。が今までの叔父の印象だったのに
最期の最後に強さと大きさの強烈な印象を付けてなくなりました。
最近少しずつ年を重ねて古びていく自分の体を、
悲しい思いで見ることが増えてたのですがこれはこれで愛しいかも。
と思えるようなできごとでした。
(もちろんできる限りのお手入れはして、大切に労ってつきあっていこうと思ってますが。)
30年後私も素敵な手をもってたいなー。
おっちゃん。今まで色々ありがとう。ほんまにいろんなこと最後の最後まで教わりました。ゆっくりやすんでや。